英語学習は、高望みをするとキリがない世界です。
今回は日本のシステム開発の現場に付き物の(笑)デスマーチになぞらえて英語学習における目標設定の大切さを解説したいと思います。特にシステム開発に携わるITエンジニアの中には、英語を仕事で使えるようになりたいと思っている人がたくさんいることでしょう。
英語学習において、忙しいエンジニアに気をつけてほしいと私が思うのは、「英語ペラペラ」みたいな漠然としたゴールイメージで勉強すると何をどこまで勉強すればいいのか分からなくなって挫折しますよ!ということです。
システム開発の知恵から学ぶ、英語学習の姿勢
英語学習であれこれ手を出すと陥る一人デスマーチ
私たち日本人の意識にこびりついた「英語がペラペラに話せるようになりたい」という曖昧な願望にとらわれて、やみくもに勉強を始めると必ず挫折します。社会人である私たちの限られた学習時間で、ネイティブスピーカーのように英語ペラペラを目指そうとするから、多くの日本人は英語学習に挫折するのだと私は考えています。
こういう状況を見ると、私はシステム開発プロジェクトの現場で発生するデスマーチと似たようなことが、1人1人の英語学習の場でも起こっているような気がします。まさに英語学習における「一人デスマーチ」です。
デスマーチの有名な定義を確認しておきましょう。デスマーチ(Death March)は日本語に訳すと「死の行進」、IT業界の特にシステム開発現場の過酷な労働環境を表す言葉として使われています。
ITエンジニアにとって定番の名著「デスマーチ ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか 」の著者エドワード・ヨートン氏はデスマーチを次のように定義しています。
・与えられた期間が、常識的な期間の半分以下である
・エンジニアが通常必要な半分以下である
・予算やその他のリソースが必要分に対して半分である
・機能や性能などの要求が倍以上である
ここで、英語学習を1つのプロジェクトだと仮定してみましょう。
あなたは「今年の春から英語を本気で勉強したい、英語ができるようになりたい!」と決意を新たにしたとします。すると、次のポイントでプロジェクトの特徴が整理できます。
- 顧客(クライアント)は自分自身
- プロジェクト成功に必要な資源は、自分自身の時間とお金
- 自分の時間は、仕事やオフの予定を除いた自由時間
- 自分のお金は、給料や貯金などから自由に使えるお金の一部
- どこに勉強のゴールがあるのかは、実は分かっていない
つまり英語学習は有限な自分のリソース(主に時間とお金)を上手く使って英語を勉強して半年後、1年後の自分が今と比べて英語力が向上している状態(プロジェクトのゴール)を実現するための「一人プロジェクト」のようなものです。
ふつうのITプロジェクトでも同じですが、上に挙げた特徴の中に、一人プロジェクトである英語学習はデスマーチ化するリスクが潜んでいます。一体どれのことか、お分かりになるでしょうか?
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それは、5番目の「どこに勉強のゴールがあるのかは、実は分かっていない」です。
開発中のシステムの要件が昨日と今日で変わるような現場を体験したことがある人は、本能的に気づくことができたことでしょう。
一口に英語力と言っても、その意味は広いです。
英文法の基礎、単語力、英文読解、速読、発音、リスニング、英作文、英会話など1つ1つの能力が互いに関連して総合的な英語力が決まります。なんとなく「英語ができるようになりたい」という要件しか出ないとたら、今の自分にとって英語のどの能力を優先的に習得しなければいけないか理解していない状態と言うことになります。それでは限りあるリソースをどの能力向上に優先的に振り分けたらいいのか判断できませんね。
英語学習には明確な目標設定があって初めて、有効に時間とお金を投資することが可能なのです。
すべてを優先するプロジェクトは失敗する
システム開発の場面でも、やる気はすごい伝わるけど何がしたいのか意味不明な提案・要望があると思います。こういうときは要件を分析して具体性を持たせ、プロジェクトの期限内に何をどこまで実現するのかを合意する段階を踏まないといけません。そうしないと、途中でプロジェクトが迷走します。
さきほどの「デスマーチ ソフトウエア開発プロジェクトはなぜ混乱するのか 」のヨートン氏も著書の中で言っているのですが、開発するシステムの目的を明確にし、 どの機能を優先的に実現すべきなのかを決めなければいけません。
すべてが最優先のプロジェクトは失敗します。このような優先順位付け、「実現する機能のトリアージ」が大事だとヨートン氏は述べています。
トリアージで英語学習のデスマーチを回避する
トリアージとは、フランス語のtrier(分別する、選りすぐる)に由来する言葉です。
もともとは災害や事故の現場で大勢の負傷者が出た場合に、医療処置の緊急性や効果に基づいてグループ分けをすることを指し、それによって限りある医療品、スタッフを割り当てる優先順位を決めます。このトリアージは、時間とコストに厳しい制約のあるプロジェクトにおいてうも、緊急性(優先度)と効果を意識してやるべきことを絞り込むのと似ています。
トリアージはデスマーチ状態に陥っってバグが山積したシステム開発の現場でも効果があります。無限に湧いてくるバグに対処するプロジェクトは、まさに災害や事故現場のような危機的状況です。
私が関係したほとんどすべてのデスマーチ・プロジェクトでは、システムの要求項目を、トリアージスタイルで、
「やらねばならぬ(must-do)」
「やったほうがいい(should-do)」
「やれればできる(could-do)」
の三つに分けるのが常識となっていた。
プロジェクトでは、完全にシステムの不具合を消し去ることは不可能です。
もし1つのバグを解消しても、その修正から派生して別の問題が生まれることもあります。どんなに長時間仕事をしても、完璧に課題が解消されるということはありえません。だからこそ、ヨートン氏の言うように、課題にも優先順位付けをして有限なリソースの制約下でプロジェクトを胴体着陸させるための取り組み(トリアージ)が大切なのです。
トリアージは、英語学習の目標管理にも通用する考え方です。
ネイティブスピーカーのように英語がペラペラになりたいと思うと、やるべき勉強量は無限大となり絶対に達成できなくなります。完璧を求めると、どこまで行ってもキリがないのが英語学習の世界です。
一人プロジェクトである英語学習の場合、デスマーチに陥った時に待っている結果は「挫折」です。英語学習にもエンジニアらしくトリアージの考えを取り入れましょう。実現したい英語力のうち、自分にとって優先度が高いのはどの能力で、自分の仕事にどれくらいの良い効果が見込めるのか?このような判断基準をはっきりさせることで、限られた自分の時間とお金で達成できるゴールを決めましょう。
英語学習のゴールを、優先順位にもとづいて決めよう
難解な洋書を読みこなしたり、ハリウッド映画を字幕なしで鑑賞したり、外国人の友人と冗談を言い合ったり…英語を生活の様々な場面で使いこなしている自分を想像し、あれもこれもと色々な勉強に手をつけると、結局自分は何を目指していたのか分からなくなり、確実に挫折します。
現在の仕事環境では英語がどう役に立つのか?
英語を仕事で活かしたいITエンジニアは、このような漠然とした目標を立ててはいけません。
先ほど紹介したトリアージの考え方を活かし、今の仕事の内容、環境にもとづいて、「英語のどのスキルを伸ばしたいのか?」「そのスキルの必要性、緊急性はどれくらいなのか?」という観点で優先順位を決めて、限られた時間とお金で成果が出るように勉強法を工夫すべきです。
ケース1
・日本企業の国内のオフィスで勤務
・プロジェクトは日本人メンバーのみ、あるいは日本語を話す外国人メンバー
・仕事で使う言葉は基本的に日本語
日本で働くほとんどのエンジニアに当てはまるケースではないでしょうか。
この場合、仕事で日本語以外の言語を話したり、書いたりする機会はほぼありません。比較的大きなチームでは中国などアジアの国出身のメンバーが入ることもありますが、その国内企業の従業員であれば基本的に彼らが私たちに合わせて日本語を話してくれます。
こういう環境では、英語を勉強しなければ!という切迫感は持ちにくいですが、英語のリファレンスやマニュアルを読みこなすことができれば開発作業はかなり効率的になるでしょう。したがって、中学生レベルの文法と単語力に、システム開発でよく使う英単語を覚えておけば十分そうですね。企業によっては社内の昇格要件でTOEICスコアが必要だったり、資格取得の報奨金の制度があったりするので、必要ならばTOEICの対策もするべきだと判断できます。
ケース2
・外資系の企業の国内オフィス
・職場では日本人のほうが多い
・上司が外国人だったり、海外オフィスと共同でプロジェクトが進行中
・会議や資料作成で英語を使う機会がある
こういう環境では普段の会話では日本語の割合が多いですが、英語で話す必要のある場面もいくつかあります。
むしろ資料作成や翻訳作業で英語をたくさん読み書きするほうが話すよりも比重が大きそうです。英文法を正確に理解した上で、ただしい英文構造で書くスキルを高めつつ、ビジネス英語でよく使うフレーズのストックを蓄えなくてはいけません。そのベースとして英語を大量に読みこなす速読もできたほうがよいです。
中学高校で文法や読解は十分やってきたけど、会話に自信がないという人は、瞬間英作文で英語をアウトプットする瞬発力をつけることで効果的にインプットされた英語の知識を会話で使えるようになります。
そう考えると、TOEIC対策を通じて800点以上取れるくらいの英語力を身につけて、それを活かして実践の場でライティングも磨いていくという学習法が適していると言えます。ライティングに関しては、google翻訳のほか、Grammarlyなど便利な英文校正ツールが登場してきています。こういうツールを活用しながら、自分の実力をカバーしつつ現場で通用する英語力を培うという学習の方向性が見いだせるでしょう。
ケース3
・勤務地が海外、職場のメンバーは多国籍
・英語はできて当たり前、むしろエンジニアとしての能力のほうが大事
・仕事以外にも英語をふつうに使う、ていうか日本語の情報が周りにない
海外に移り住んで、様々な国籍のメンバーと真剣に仕事をしたいような場合ですね。このレベルを目指すと、もはやTOEIC900点を取れるくらいでは意味がないです。TOEICはあくまで英語の大会に漕ぎ出すまでの練習みたいなものですから。生活のほとんどの部分を英語が占めることになるし、英語でどんどん新しい知識を吸収して気迫あふれる海外エンジニアと互角に渡り合っていかなければいけません。
英語を話す人はネイティブばかりではないので、色々な国籍の人が話す英語にも慣れないといけません。クセのある発音も聞き取り、お互いに分かりやすい単語を選んでシンプルに言いたいことを表現し、遠慮せずに何度でも質問して認識のズレが無くすことが大切です。また、日常的に接する情報も英語がメインの環境になるので、英語のニュースや映画などで話されてる言葉もしっかりリスニングできるようになれば非ネイティブとしては文句のつけようがないレベルではないでしょうか。
最近の中国やアジア圏の国では、日本では想像のつかない勢いでテック系の新サービスを提供して急成長している企業もたくさんあります。海外で働く場合に英語ではなく中国語やそのほかの言語がメインの環境でエンジニアリングする可能性だって、ひょっとしたらあるかもしれませんね。
仕事で必要な英語力は人によって色々ある
現在の、あるいは将来目指したい仕事環境によって、目標とすべき英語力はずいぶん違うことをイメージしていただけたでしょうか?
日本在住のエンジニアの場合、ほとんどがケース1に近いと思いますが、エンジニアにとって英語ができる恩恵はほかの職種よりかなり大きいです。なぜなら、日本語に翻訳される前の素の情報に英語でアクセスでき、Youtubeその他の動画学習サービスを使って開発に必要な知識をインプットできるからです。
コーディング作業でも、微妙な名前の変数やDBのテーブル名ではなく正しい英語で書けるようになると、読みやすさが向上します。英語ができるメリットは日本国内に閉じた仕事環境でもかなり大きいと思います。
また、日本にいても海外のエンジニアとクラウドソーシングで開発プロジェクトを進めることができます。
英語ができるとUpworkやfreelancer、99designsなど世界中のエンジニアやデザイナーが登録しているサービスを使って「海外進出」ができる時代になりました。
フリーランスの個人や地方の中小企業にとっても、英語ができるメリットがどんどん大きくなっていると言えます。
英語学習には目標設定と優先度づけが大事!
英語学習という一人プロジェクトで陥りがちな間違いのせいで、「一人デスマーチ」状態になりうるリスクについてお話ししました。
英語学習は上のレベルを求めると本当にキリがない世界です。
ネイティブスピーカーのように英語で冗談を言うとか、ハリウッド映画や海外ドラマを字幕なしで楽しみたいと気軽に言う人が多いですが、じつはかなり壮大な目標です。
TOEIC900点以上を取っている人でもハリウッド映画のセリフを聞き取ることはほとんど不可能です。
高い目標はもちろん大事ですが、あえて目線を落として自分に合った学習ステップを歩んだほうが成果を実感しやすいです。
自分で勉強を進めるのが不安な人へのおすすめ情報
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